腰痛とは
腰痛とは、背中側の肋骨の下からお尻までの腰まわりの痛みや炎症をいいます。痛みの度合いや範囲は個人差があり、激しい痛みが続く、背骨やお尻も痛みを伴うなど、様々です。
厚労省が発表した「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によると、健康状況で病気やケガなどの自覚症状がある割合(有訴者率)は男女ともに腰痛が1位でした。それほど腰痛は肩こり同様に国民病ともいえるかもしれません。https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/index.html
私たち人間は、立って過ごす時間が長く、全身の加重は背骨にある腰椎(ようつい)と骨盤で支えられています。腰椎は5つの椎骨からできており、全身を支えるので、大きな力がかかっていることがわかります。この腰部への負担、加齢に伴う筋力低下により腰痛が生じているのです。
介護現場での腰痛
介護現場の状況
公益財団法人 介護労働安定センター※によると、介護労働の現状について、労働者は下記のような課題を抱えています。
労働条件等の悩み、不安、不満等(複数回答)(上位抜粋)
内容 | 比率(%) |
人手が足りない | 52.1(52.3) |
仕事内容のわりに賃金が低い | 41.4(38.3) |
身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある) | 29.8(30.0) |
健康面(新型コロナウイルス等の感染症、怪我)の不安がある | 29.0(28.1) |
人手不足は昔から言われていることですが、「身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)」は約30%の介護職の方々が抱えている悩みであると気づかされます。「介護の仕事をしている以上、仕方ない」と思うかたもいるかもしれません。
腰痛の原因
では、なぜ介護現場で腰痛が発生しやすいのでしょうか。
介護現場では、介護者を抱きかかえる際に中腰や前かがみなど、腰部に負担がかかりやすい姿勢になることがしばしばあります。他にも、おむつやシーツの交換時、入浴介助では長時間同じ姿勢でケアしたり、持ち上げたりすることも。
腰痛の原因となるのは以下の通りです。
- 前かがみや中腰
- 腰の捻じり
- 腰をひねる
- 無理な姿勢
- 長時間同じ体制
- 持ち上げ
人手不足により長時間勤務となると、腰への負担は大きくなるばかりです。座り仕事が多い場合は、腰痛防止のシートクッションで予防する方もいらっしゃいますが、介護現場では常に体を動かしているだけに、コルセットや痛み止めでなんとなくごまかしながらお仕事される方が多いのが現状です。痛みに絶えず退職してしまうケースがあるため、介護職と腰痛について、常に対策を考えなければなりません。
介護現場の腰痛改善
では、介護職の方々が健康的に働き続けるために、どのようなケアがあるのでしょうか。
リフト等の移乗支援
令和3年度の介護報酬改定※で、介護職員等処遇改善加算の算定要件(キャリアパス要件・職場環境等要件)の「処遇改善に関する加算の職場環境等要件※」の中に、『腰痛を含む心身の健康管理』が取り上げられ、下記のように腰痛対策が設けられています。
介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援、介護ロボットやリフト等の介護機器等導入及び研修等による腰痛対策の実施
その他にも、生産性向上のための業務改善としてタブレット、ICT活用や見守り機器の導入も挙げられており、介護職員の職場改善に取り組む事業者も増えつつあります。
※厚労省 処遇改善に関する加算の職場環境等要件 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000953647.pdf
SNSやテレビCM等でパワーアシストスーツをご覧になったことはありませんか?装着するだけで腰の負担が軽減され、重たいものを軽々持ち上げることができるスーツです。介護の現場の他にも農作業、物流、建設現場などでも重宝されています。
腰痛ベルト等の対策グッズ
腰痛がひどくならないように、腰痛、骨盤ベルトやコルセットを巻いてお仕事される方も多いようです。ただ、腰痛ベルトやコルセットは根本的な治療ではなく、痛みの緩和にすぎないので、どうしても痛みがひどくなったら、病院に相談しましょう。
一方、介護者と介助者が異性の場合、抱きかかえるとどうしても接触します。場合によっては異性と接触するのが嫌がる場合もありますし、またハラスメントも問題になっています。(令和3年度の介護報酬改定ではハラスメント対策が義務化されています)。職員が抱えるセクハラへの悩み、またそのストレス緩和にプロテクターも注目されています。
セルフケア
その他のケア方法について4つご紹介します。
1,入浴はじっくり体をあたためるので、腰痛が軽減されることがあります。リラックス効果もありストレス発散にも効果的です。
2,作業前にしっかりとストレッチをして筋肉が固まらないようにほぐしましょう。厚生労働省「介護・看護作業等でのストレッチング」 ※より抜粋
廊下、フロアなどで行うストレッチング介護施設には手すり、テーブル、椅子、受付カウンターなどがあります。それらをストレッチングの補助道具として利用します。
※介護業務で働く人のための 腰痛予防のポイントとエクササイズ https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001103960.pdf
3,可能であれば介護者に動いてもらう。これは介護者の自立支援にもつながります。
4,マッサージを行う
腰痛の原因や範囲、痛みの度合いは個人差があり、ひとりひとり症状が異なります。その人の筋力や柔軟性、姿勢、癖、生活習慣などに影響されるので、一概に対策をしぼることは難しいところですが、腰痛は「我慢しない」ことが大切です。どうしても痛みが続き、仕事や生活に支障が出る場合は速やかに整形外科で医師に相談するとよいでしょう。我慢し続けて介護を続けてしまうと元もこうもありません。
まとめ
介護職員として腰痛は切ってもき離せない症状の一つでもあります。心身の健康を壊さないように自分なりに工夫していかなければなりません。そのためにも日々の習慣から見直したり、道具に頼ってみたり、自分に合った方法を試しながら自分の身体を守っていただければ幸いです。