高齢化が進む日本において、介護施設での看取りケアの重要性が増しています。看取りケアとは、終末期を迎えた高齢者が尊厳を持って最期の時を迎えられるよう、身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな側面を支援するケアのことです。本記事では、介護施設で行われる看取りケアの意義や実践方法、課題について詳しく解説します。

看取りケアの意義
介護施設における看取りケアは、単なる医療行為ではなく、入居者とその家族が安心して最期の時間を過ごせるようサポートする役割を果たします。その意義として、以下の点が挙げられます。
- 尊厳の維持: 高齢者が自分らしく最期を迎えられるよう、意向を尊重したケアを提供する。
- 苦痛の緩和: 身体的な痛みだけでなく、不安や恐怖などの精神的な苦痛にも配慮する。
- 家族の支援: 家族が看取りに関与できるようサポートし、グリーフケア(遺族ケア)も行う。
介護施設での看取りケアの実践
看取りケアを実践するためには、多職種の連携が不可欠です。介護士、看護師、医師、ケアマネージャーなどが協力しながら、以下のようなケアを行います。
(1) 事前の意思確認
看取りケアでは、本人や家族の意思を尊重することが重要です。入居時や病状が悪化する前に、延命治療を希望するかどうか、どのようなケアを望むかなどを話し合います。
(2) 身体的ケア
終末期の高齢者は、食欲低下や痛みの増加など、さまざまな身体的変化を経験します。そのため、以下のようなケアが求められます。
- 痛みを和らげるための緩和ケア(医師の指示に基づく鎮痛剤の使用)
- 口腔ケア(口の渇きを防ぎ、誤嚥を防ぐ)
- 皮膚の保護(褥瘡予防のための体位変換や保湿)
(3) 精神的・心理的ケア
終末期にある高齢者は、不安や孤独感を抱えることが多いため、心のケアも重要です。
- 声かけや手を握るなどのスキンシップ
- 好きな音楽を聴く、思い出話をする
- 宗教的な支援(希望があれば僧侶や牧師などの協力)
(4) 家族への支援
家族が最期の時間を安心して過ごせるよう、介護施設側が適切にサポートします。
- 看取りの際の面会や宿泊の受け入れ
- 家族に対する心のケア(グリーフケア)
- 亡くなった後の手続きや対応のサポート
介護施設で看取りケアを行うメリット、デメリット
メリット
- 看護師常駐の施設では医療行為が可能で、緩和ケアが期待できる。
- 家族の介護の負担が減る。
デメリット
- 看取りケアができる施設が限られる。
- 病院に比べて専門的医療行為は限られる。
在宅での看取りに比べ、24時間体制での介護の必要に迫られないのが介護施設です。施設数も団塊世代が軒並み平均寿命に達する2040年台に向けて増加傾向にあるため、今後も介護施設での看取りは増えていくでしょう。
ただし、家族やご本人が施設での看取りを希望していても、その体制ができていない施設の場合やご本人の容態が施設のできる対応を超えた場合、対応可能なほかの施設や病院へ移ることになるため、入居の前に看取りに関しての対応の確認が必要です。
看取りケアの課題
介護施設での看取りケアには、いくつかの課題もあります。
(1) 介護スタッフの負担
看取りケアは、通常の介護業務に加えて精神的な負担が大きくなります。入居者が亡くなるたびに喪失感を抱えるスタッフも多く、バーンアウトのリスクが指摘されています。そのため、介護職員向けのメンタルケアや研修が必要です。
(2) 医療との連携
終末期の入居者に対する医療的ケアは、介護施設単独では難しい場合があります。特に、医師や看護師が常駐していない施設では、外部の医療機関との連携が不可欠です。
(3) 家族の理解と合意
家族が延命治療を希望する場合、看取りケアの方針と対立することがあります。事前にしっかりと説明し、合意形成を図ることが大切です。
まとめ
介護施設での看取りケアは、高齢者が自分らしく最期を迎えるために重要な役割を果たします。介護士や看護師、医師が連携し、入居者と家族の気持ちに寄り添ったケアを提供することが求められます。また、介護スタッフの負担軽減や医療との連携強化も課題として挙げられます。
これからの時代、介護施設での看取りケアの質を向上させることがますます求められるでしょう。適切なケアと家族への支援を行うことで、高齢者が安心して人生の最終段階を迎えられる社会を目指していくことが重要です。
